Andante Festivo アンダンテ・フェスティヴォ
シベリウスの没後40周年記念企画として、1997年にFINLANDIAから「シベリウスの遺産」という2枚組のCDが発売されました。以下は国内盤のブックレットにある吉松隆氏の一文。
『初めてシベリウスの指揮による《アンダンテ・フェスティヴォ》を聴いたとき、なぜか涙があふれて止まらなかった。厳しいまでに澄んだ叙情と、すべてを許すような優しさ。祈るような淡々とした歩みで紡がれるその音楽は、深い深い青をたたえる湖のような静けさと荘厳さを併せ持っていた。人間が作り出したもっとも崇高なもののひとつを今聴いているのだと、その時思った。』
これだけを読むと、音楽家にありがちな感情過多との印象を受けてしまうかもしれませんが、大袈裟でも誇張でもなく、このCDに聴く「アンダンテ・フェスティヴォ」は本当にこのような曲なのです。
さて、「作曲者本人が指揮をした唯一の録音」であり、しかもその曲と演奏があまりにすばらしいので、たった7分のこの短い曲のために2枚組CDを買った人も多かったことでしょう。ところがその後、「本当に作曲者本人が指揮をした唯一の録音」が発見され、FINLANDIA盤の方は「指揮者不詳の偽物」と呼ばれるようになってしまいました。今ではほとんど「偽物」としてのエピソードでしか語られません。
「本物」は2001年にONDINEから発売された「Sibelius Favourites」で聴くことができます。これも実はかなり良い演奏なのですが、「人間が作り出したもっとも崇高なもののひとつ」と一聴で思わせるFINLANDIA盤は、やはり比較を絶した奇跡の演奏であると、私は今も変わらず思っています。人生の終焉に昔日の一切を胸にして日没の空を遠く仰ぎ見るような感極まる情感は、FINLANDIA盤でこそ鮮やかに聴かれるものです。「間違えられていた偽物」というだけでこれほどの「本物の音楽」が評価されなくなってしまったのはとても残念です。
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シベリウスの遺産 FINLANDIA WPCS-5936/7 (4509-95881-2) 廃盤なので入手はかなり難しい…。 再発も期待できないし、もったいないなあ。 |
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Sibelius Favourites ONDINE (ODE 992-2) シベリウス指揮のアンダンテ・フェスティヴォを所収。 FINLANDIA盤と非常によく似た演奏です。上記の演奏が間違えられたのも無理はないですね。これも別格の名演。 |
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シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ BIS KKCC-2365 (BIS-CD-1265) 上の2枚とはまた違った演奏ですが、入手できる CD の中では一番のオススメ! 他の曲も極上の素晴らしい演奏。とにかく弦の響きが美しい。 |
追記:
書こうかどうしようか迷ったのですが、思い出なので書いておきます。私が最初に吉松隆氏の一文を読んだのは、CDケースの中のブックレットではなく、その印刷用の版下です。印画紙の裏にペーパーセメントを塗って切り貼りしながら「これは聴かねば!」と思ったのをよく覚えています。そして発売を待って購入、期待を込めて聴いたときの感動の素晴らしさは言うまでもないでしょう。
ついでにもうひとつ。ウェストミンスターの国内ビクター盤、驚異的な音質改善で有名ですが、とくにクナッパーツブッシュのブルックナー8番の版下を「私にやらせて!」と頼んだのも、懐かしい思い出です。
