シュタルケルのコダーイ無伴奏チェロ/米Period録音の同演異盤
2007/10/15 改訂
2009/12/22 録音したファイルを追加
シュタルケルが米Periodに録音したコダーイ「無伴奏チェロソナタ op.8」には各種の同演異盤があります。
2006年、それらをH先生からまとめてお借りするという僥倖に恵まれました。この貴重な経験を私個人だけで楽しむのはあまりにもったいなく、広く参照できるようにとの思いで作ったのが、このページです。
さて、公開から1年以上が過ぎたところで、さらに詳しい情報をT氏からいただきました。それは、当初の構成の変更を余儀なくされるほどの驚くべき内容でした。以下の記述は、その貴重な情報を反映した改訂版です。
その前に、この米Period録音は、かなり広範に不正確な情報が散見されます。ここでちゃんと整理しておきましょう。シュタルケルはop.8をこれまでに何度も録音していますが、米Period録音は2回目です。1回目ではありません。
1回目:1948年 仏Pacific(SP盤)
2回目:1950年 米Period(LP盤)
ここで注意していただきたいのが、よく見聞きする「米Periodの原盤はSP盤」というのは完全な誤りだということです。上記2つは別々の異なった録音です。米Periodの初期の品番はSPLPなので、そこから「SPをLPにした」と誤解した方が多かったのでしょうね。
そしてこの誤解をさらに広範に浸透させたのが、PHILIPSの復刻CD(25CD-927)です。日本発売の際に付けられた帯と解説に「録音:1948年頃」と記載があります。これは日本フォノグラムが1回目の録音と混同した間違いです。
1回目の録音は、2007年にDeltaからCDで初めて復刻されました(DCCA-0035)。米Periodよりさらにプロミティブな演奏で、とても素晴らしいものです(針音除去処理が原因と思われるデジタル歪みが多いのが残念)。
ちなみに、3回目は1957年の英Columbia(33CX 1595)です。米Periodと比べるとずっと柔らかく落ち着いた演奏で、いかにもスタジオ録音らしい印象を受けます。(この米Angel盤(35627)はよく見かけますね)
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初版あるいは2版 米Period SPLP 510 フラット ジャケット レーベル |
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ジャケット レーベル |
まずは、初版と2版の「音の違い」について説明しなければいけません。この差が歴然としているからこそ、私たちは初版と2版の区別にこだわらざるをえないのです。
初版:これを聴いて、はじめてこの演奏を聴いた時の衝撃を思い出しました。いえ、それ以上かもしれません。シュタルケルの肘、腕、肩、背中の動きが見えるようで、弓と弦のどの箇所をどのように当てているかまで簡単に分かりそうなほどの鮮烈さです。スタジオ録音ですが、初版はまるで即興演奏のライブ録音のようです。この曲に楽譜があることを疑わせるほど、すべての音がシュタルケルの霊感から生まれ、音楽が今まさに誕生する瞬間に立ち会うことができます。
2版:レコードというのは総じて、版を重ねる度に音の新鮮さが失われていく傾向があります。すべて初版が最良というわけではありませんが、この2版も例外ではなく、初版と比べるとどうしても聴き劣りがします。良い言い方をすれば、少し冷静になった感じ。悪い言い方をすれば、少し漂白された感じです。とは言うものの、音の傾向は初版とほとんど同一で、演奏の良さを味わうには十分すぎるほどだと私は思います。
さて、このページを公開した当初、私は「赤=初版」「緑=2版」と色の違いだけで分類していました。しかしT氏の情報で、実際にはそう単純ではないことが分かりました。これまで分かっていたことも含めてまとめてみます。
・音の違いはジャケットやレーベルの色(赤と緑)に必ずしも対応していない。
・音の違いはむしろ「スタンパー番号」に正確に対応している。
・スタンパー番号は「1I」「1II」の2種類ある。( I と II はローマ数字)
・「1I」の方があきらかに鮮烈で、こちらが初版。「1II」が2版。
・この2種類のスタンパー番号は、赤と緑のどちらにも存在する。
・盤の厚さも、極厚盤と厚盤の2種類ある。
・この2種類の盤厚は、赤と緑のどちらにも存在する。
(ただし、スタンパー番号と盤厚が正確に対応しているかどうかは不明)
こうして見てみると、どう考えても「米Periodは赤と緑を同時に混在させて併売していた」としか思えません。したがって、赤と緑のどちらが先かというのは無意味な考察となります。どちらの色であっても、より音の良い方が初版であり、またそれをスタンパー番号で見分けることもできる、ということです。
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3版 米Period SPL 510 フラット ジャケット レーベル |
この3版で品番が「SPLP」から「SPL」になります。そして音に米盤らしいキツさがでてきます。しかし決して悪い音ではなく、初版とは違った力強さがあるので、この音を好む人もいることでしょう。こちらも、演奏の良さを味わうには十分すぎるほどです。
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4版 米Period SPL 510 フラット ジャケット レーベル |
驚いたことに、この4版で急激に音が劣化します。ここで紹介している6種類の中でこの盤だけが飛び抜けて古ぼけた音です。いったい米Periodに何が起こったのでしょうか? 劣化の度合いがあまりに大きく、マスターテープの管理に失敗したのではと思ってしまうほどです。もし4版でしかこの演奏を聴いたことがないという方がおられましたら、なんとしても他の5種類のどれかを入手してください。あまりの鮮度の違いに愕然とすることでしょう。
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英Nixa 米Period録音 PLP 510 フラット SPLP 510 初版の原盤でプレス ジャケット レーベル |
私が所有している英Nixaの2版です。Nixaの初版は共通ジャケットで、2版がこの赤ジャケットになります。DECCAプレスということで人気のある盤です。音は米Periodの2版と甲乙つけがたいと思います。違いは「お国柄」みたいなものでしょうか。
以下はこの盤を録音したものです。
この演奏の素晴らしさが少しでもお伝えできれば嬉しいです。
Side 1: 第一楽章 & 第二楽章(途中まで)
Side 2: 第二楽章(続き)& 第三楽章
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仏Pacific 米Period録音 LDP-F 29 フラット ジャケット レーベル |
この盤は、まず目にする機会もない「稀覯盤」と言えるほどの貴重なものです。
仏Pacificは1回目の録音と同じレコード会社ですが、このLP盤に収録されているのは1回目ではなく、2回目の米Period録音の方です(紛らわしいですね)。
他の盤ではどれも意志的な演奏の中からシュタルケルの才気を聴くことができました。もちろんこの仏盤も同様なのですが、特徴的なのは、その演奏が才気にまかせたものではなく、知的な洞察の上にあることを感じさせる点です。そして弦の美音は、さすがPathèプレスです。
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日本コロムビア 詳細不明 青レーベルまたは緑レーベル |
中古レコード店で一聴しただけですが、すべてがモゴモゴとこもっていて、鮮烈さのかけらもない音です。米Periodの4版と同等、もしくはそれより酷いかもしれません。
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日本フィリップス 詳細不明 |
これも中古レコード店で一聴しただけですが、現代的な音作りをしているような印象でした。モゴモゴとしていないので普通に聴くことができます。米Periodの4版よりも良いと思います。
米Periodの初版はやはり格別でした。これを聴いてしまうと、2版やNixaの峻烈な音でさえ再発らしく感じてしまいます。
どのレコードも入手難でとても高額ですが、ぜひ入手して聴いてみてください。根気よく探せば、いつかは出会えると思います。(ただ、高値なのにひどく傷だらけのものも見かけますので、そういうレコードは避けた方がいいと思います)
最後に、貴重なレコードをお貸しくださったH先生には、なんと感謝を申し上げていいのか分かりません。そして、より詳細な情報を提供してくださったT氏にも感謝いたします。また、このページでなにかお気づきのことや新しい情報などがありましたら、どうぞメールでお教えいただけると助かります。












