AdobeのXMP(Extensible Metadata Platform)は、デジタルファイルにメタデータを埋め込むための技術です。そのメタデータには、ファイルの作成に使用されたソフトウェアの名前やバージョンを記録する「CreatorTool」というフィールドがあります。
Illustratorファイルにも当然XMPが埋め込まれており、CreatorToolも記録されています。Illustratorのメニュー「ファイル > ファイル情報…」で「Rowデータ」を選択すると、実際に埋め込まれたXMPとCreatorToolを確認できます。
CreatorToolフィールドの情報は「基本 > アプリケーション」にそのまま表示されます。
Bridgeの「メタデータ > ファイルプロパティ > アプリケーション」にもそのまま表示されます。
このCreatorToolは、Illustratorファイルの作成アプリバージョンを確認するのにとても便利そうです。しかし、残念ながら、CreatorToolの情報は常に正しいわけではなく、誤っている可能性が常につきまとっているのが現状です。
IllustratorのCreatorToolは誤っていることがある
例えば、2020(24.3)で新規作成されたIllustratorファイルがあるとしましょう。このファイルのCreatorToolは「Illustrator 24.3」です。これは正しい。新規ドキュメントのCreatorToolは常に正しいです。
次に、このファイルを2021(25.4)で開き、編集して、cmd+Sで保存したとしましょう。このファイルのCreatorToolは「Illustrator 24.3」で変わりません。本当なら情報が更新されて「Illustrator 25.4」にならなければいけません。しかし、更新されないのです。
このファイルのCreatorToolを更新するにはどうすればいいのか。方法はあります。shift+cmd+Sで別名保存をすれば、ちゃんと更新されます。
2022(26)以降で更新される条件が変わった
CreatorToolを正確な情報に更新するには別名保存をするしかありませんでした。ところが、2022(26)でこっそりと更新条件が変更されていたことが分かりました。
2020(24.3)のファイルを2022(26.5)で開き、編集して、cmd+Sで保存したとしましょう。
この時に、環境設定で「バックグラウンドで保存」がONになっていると、CreatorToolは「Illustrator 26.5」に更新されるようになりました。しかし残念なことに、バックグラウンド保存がOFFになっているとCreatorToolは更新されません。
本当なら、バックグラウンド保存がONでもOFFでも更新されなければいけません。そうではないのは、あきらかに不具合でしょう。なお、この重要な仕様変更はどこにも記載がないサイレントアップデートです(あるある)。
それでもバックグラウンド保存はOFFにするべき
「バックグラウンドで保存」は、デフォルトでONです。しかしこれがONになっていると、バックグラウンド機能が搭載された2020(24)以降の経験上の知見として、PDF互換のPDFデータがネイティブデータと異なる見た目になってしまう事故が発生しやすくなります。非常にやっかいなので「バックグラウンドで保存」は(「バックグラウンドで書き出し」も含めて)OFFにするのを強く勧めます。CreatorToolが更新されないけれども、それより事故の抑制の方がはるかに重要なので、OFFにするのを強く勧めます。