InDesignの正規表現のUnicodeバージョン

InDesignは2019(v14)からメジャーバージョンアップ時にBoost.Regexも更新するようにしたようで、正規表現のUnicodeバージョンも更新されるようになりました。

CC 2018(v13)まで Unicode 5.1
CC 2019(v14) Unicode 9.0
2020(v15) Unicode 12.0
2021(v16) Unicode 13.0
2022(v17) Unicode 13.0
2023(v18) Unicode 14.0
2024(v19) Unicode 15.0, 15.1

正規表現のUnicodeバージョンの調べ方

Unicodeのバージョンにとくに影響するのは、\dや\sといった略記法です。InDesignの「\d」はUnicodeカテゴリーの「Nd」に相当するので、各UnicodeバージョンのNd文字をinddに並べて、\dでマッチするかどうかを調べれば良いわけです。

下図は2020(v15)で開いたinddです。\dにマッチするかしないかを視覚的に概観できるようにしています。これを見ると、Unicode 12まで全てマッチしていますが、Unicode 13以降に追加されたNd文字にはマッチしていません。一目瞭然で簡単に分かりますね。

ダウンロード Verification-Nd.zip
正規表現スタイルで自動的に\dのマッチが反映されるようにしています。idmlを各InDesignバージョンで開くだけで結果が表示されるので試してみましょう。

IllustratorのCreatorToolの更新について

AdobeのXMP(Extensible Metadata Platform)は、デジタルファイルにメタデータを埋め込むための技術です。そのメタデータには、ファイルの作成に使用されたソフトウェアの名前やバージョンを記録する「CreatorTool」というフィールドがあります。

Illustratorファイルにも当然XMPが埋め込まれており、CreatorToolも記録されています。Illustratorのメニュー「ファイル > ファイル情報…」で「Rowデータ」を選択すると、実際に埋め込まれたXMPとCreatorToolを確認できます。

CreatorToolフィールドの情報は「基本 > アプリケーション」にそのまま表示されます。

Bridgeの「メタデータ > ファイルプロパティ > アプリケーション」にもそのまま表示されます。

このCreatorToolは、Illustratorファイルの作成アプリバージョンを確認するのにとても便利そうです。しかし、残念ながら、CreatorToolの情報は常に正しいわけではなく、誤っている可能性が常につきまとっているのが現状です。

IllustratorのCreatorToolは誤っていることがある

例えば、2020(24.3)で新規作成されたIllustratorファイルがあるとしましょう。このファイルのCreatorToolは「Illustrator 24.3」です。これは正しい。新規ドキュメントのCreatorToolは常に正しいです。

次に、このファイルを2021(25.4)で開き、編集して、cmd+Sで保存したとしましょう。このファイルのCreatorToolは「Illustrator 24.3」で変わりません。本当なら情報が更新されて「Illustrator 25.4」にならなければいけません。しかし、更新されないのです。

このファイルのCreatorToolを更新するにはどうすればいいのか。方法はあります。shift+cmd+Sで別名保存をすれば、ちゃんと更新されます。

2022(26)以降で更新される条件が変わった

CreatorToolを正確な情報に更新するには別名保存をするしかありませんでした。ところが、2022(26)でこっそりと更新条件が変更されていたことが分かりました。

2020(24.3)のファイルを2022(26.5)で開き、編集して、cmd+Sで保存したとしましょう。

この時に、環境設定で「バックグラウンドで保存」がONになっていると、CreatorToolは「Illustrator 26.5」に更新されるようになりました。しかし残念なことに、バックグラウンド保存がOFFになっているとCreatorToolは更新されません。

本当なら、バックグラウンド保存がONでもOFFでも更新されなければいけません。そうではないのは、あきらかに不具合でしょう。なお、この重要な仕様変更はどこにも記載がないサイレントアップデートです(あるある)。

それでもバックグラウンド保存はOFFにするべき

「バックグラウンドで保存」は、デフォルトでONです。しかしこれがONになっていると、バックグラウンド機能が搭載された2020(24)以降の経験上の知見として、PDF互換のPDFデータがネイティブデータと異なる見た目になってしまう事故が発生しやすくなります。非常にやっかいなので「バックグラウンドで保存」は(「バックグラウンドで書き出し」も含めて)OFFにするのを強く勧めます。CreatorToolが更新されないけれども、それより事故の抑制の方がはるかに重要なので、OFFにするのを強く勧めます。

Illustratorファイルのバージョン情報

Illustratorファイルには「アプリバージョン」「互換バージョン」の2種類の情報が記録されています。v8以降で保存されたファイルなら、この2つが確実に記録されています。

ファイルをエディタ等で読み込み、特定の記録箇所を見つけることで、バージョン情報を確認できます。

アプリバージョン

実際にファイルを開いて保存したIllustratorアプリのバージョンです。
記録箇所は「%%AI8_CreatorVersion:」です。

例)
%%AI8_CreatorVersion: 8.0.1
%%AI8_CreatorVersion: 15.1.0
%%AI8_CreatorVersion: 26.5.3

フルバージョンがしっかりと記録されています。保存する毎に正確に記録されるので最も信頼性の高い情報です。ファイル内に1箇所だけ出現します。

互換バージョン

Illustrator/EPSオプションの設定バージョンです。
記録箇所は「%%Creator: Adobe Illustrator(R)」です。

例)
%%Creator: Adobe Illustrator(R) 8.0
%%Creator: Adobe Illustrator(R) 15.0
%%Creator: Adobe Illustrator(R) 24.0

バージョンダウン保存されているかどうかを確認するところです。これも保存する毎に正確に記録されます。
aiファイルは、ファイル内に1箇所だけ出現します。
epsファイルは、ファイル内に2箇所出現します。1つめではなく、2つめが互換バージョン情報なので注意しましょう。

その他のバージョン情報は信用できない

ファイル内には上記の他にもバージョン情報が散見されます。どれも不正確になりがちなので信用してはいけません。例えば、「<xmp:CreatorTool>」はBridgeの「メタデータ>ファイルプロパティ>アプリケーション」に表示される情報ですが、別名保存以外の保存操作では情報が更新されません。不正確になりがちなので信用してはいけません。

クラウド保存するとバージョンを調べるのは不可能

ローカル保存ではなくクラウド保存すると、「アプリバージョン」を確認する方法は全くありません。

クラウド保存したものをaiファイルでダウンロードしても、そのaiファイルは、その時点で運用されているAdobeのサーバにあるIllustratorアプリで保存されたものになってしまいます。もともと何のアプリバージョンだったのかを確認する手立てはありません。

File List Print 2.7.0

File List Printを2.7.0にアップデートしました。
ダウンロードはFile List Printのページからどうぞ。

2.6.0で追加した新機能がさらに便利になりました。

  • 環境設定をウインドウからパネルに変更
  • 環境設定パネルに設定変更を即座に反映できる「リストに適用」ボタンを追加
  • リストのフォルダをダブルクリックで展開するようにした
  • メインウインドウに列幅を最適化する「列幅を調整」ボタンを追加
  • メニュー「表示 > 列幅を調整」を追加
  • メニュー「ファイル > Finderに表示」を追加

Illustratorファイルのアプリバージョン判定も少し改善しました。数MB程度のファイルサイズなら若干速くなったかもしれません。それ以上になると(とくにEPSで)全部読み込んでやっと判定できるようになるので、やはりファイルサイズが大きいほど激遅です…。