NSTextView の「スマート引用符」

Cocoa アプリで文字入力ができる箇所は、ほとんどが NSTextView です。そこには開発者が自分で実装しなくても付いてくる機能がいくつかあります。そのひとつが「スマート引用符」。
Smart Quarts
「スマート引用符」を理解するには、英文の引用符が抱える問題を知っておかないといけません。コンさんが InDesignによる欧文組版の基本操作その4 でこの問題に触れています。必読。(以降は読んだことを前提にして書きます)

「まぬけ引用符」は「Dumb Quote」の和訳です。パソコンのキーボードにある引用符のキーを普通に押すと「まぬけ引用符」が入力されてしまいます。引用符の正しい/正しくないは、パソコンが普及した以降の比較的新しい問題なんですね。商業印刷物の英文の文章に「まぬけ引用符」を使うのは、それこそ間抜け以外のなにものでもありません。私は昔、外国のCDジャケットの印刷データを日本盤用にローカライズする仕事をしていましたが、元の英文で「まぬけ引用符」を一度も見たことがありませんでした。

ただ、文字コードの ASCII には「左右の向きが区別された正しい引用符」がなく、シフトJISにも英文用の正しい引用符がなかったので、まぬけ引用符を入力するしかない制約がありました(今はほとんどの環境が Unicode なので制約はありません)。それにプログラムのコードでは、まぬけ引用符に特別な意味があって、正しい引用符の方が dumb だったりします。そこで、ここではまぬけ引用符を「アスキー引用符」と呼ぶことにします。

アスキー引用符に対して、左右の向き(openとclose)が区別されている正しい引用符のことを「Smart Quotes」と言います。「スマート引用符」はこれの直訳です。ツイッターでさらに日本語訳を聞いてみたところ「マヌケじゃない引用符」「左右クオート」「勾玉引用符」「起し/受けのクォート」「まとも(な)引用符」といろいろな案が出されました。ありがとうございます。でもやっぱりここではそのまま「スマート引用符」と呼ぶことにします。

NSTextView の「スマート引用符」は、ユーザがアスキー引用符を入力すると、自動的にスマート引用符に置換する機能です。デフォルトでは OFF になっています(Word はデフォルトで ON になっているようですね)。上図のコンテクストメニューで ON にできますし、テキストエディットは環境設定でずっと ON にすることもできます。

ただし、これが効くのは入力している時だけで、すでにアスキー引用符になっている場合には効きません。でもご安心を。文字を選択してコンテクストメニューを表示させると「引用符を置き換える」が現れます。そこを選べばスマート引用符に置換されます。
(追記:「引用符を置き換える」は OS X 10.6 で追加された機能です)

引用符を置き換える

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