v9以降の今のIllustrator形式ファイル(.ai)についてちゃんと説明しているところがないようなので、ここで大雑把に説明してみます。
結論から言うと、Illustrator形式のファイルはPDFファイルです。このことはIllustratorが大好きな皆さんもよく知っているでしょう。ここで私が説明しようとしているのは、それをもうちょっと大雑把に掘り下げた話です。
PDFファイル
PDFファイルの中を覗くと、最初に「%PDF」と書かれていて、最後に「%%EOF」と書かれています。大雑把にいうと、PDFファイルは「%PDFから始まって%%EOFで終わっているファイル」のことです。Illustrator形式のファイルもこうなっています。
「PDF互換ファイルを作成」オフのIllustratorファイル
それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオフにしたIllustratorファイルは、PDFファイルではないのでしょうか? 実はちゃんと%PDFから始まって%%EOFで終わっている歴としたPDFファイルです。そうすると中身はどうなっているのでしょうか?
「これはPDFの内容を含めずに保存されたAdobe® Illustrator®ファイルです」と書かれたものを皆さんは見たことがあるでしょう。あれが保存されたPDFそのものです。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれています。
なお、ネイティブデータはPDFとは異なる独自仕様のデータです。今のIllustrator形式はネイティブデータだけを指すのではなく、PDFファイルの一部に非PDFのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。
「PDF互換ファイルを作成」オンのIllustratorファイル
それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオンにして保存するとどうなるでしょうか?
IllustratorのネイティブデータがPDFに変換されて保存されます。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれます。
「PDF互換ファイル」は、ネイティブデータをちゃんとPDFに変換したファイルであるという意味なんですね。めちゃくちゃ分かりにくい。
大雑把なまとめ
- 今のIllustrator形式ファイル(.ai)は、常にPDF形式のファイルとして保存されます。そして常に非PDFであるネイティブデータを中に含みます。
- Illustratorのネイティブデータを直接開いて編集できるのは、Illustratorだけです。
- AcrobatがIllustratorファイルを開く時、Acrobatが開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
- AcrobatでIllustratorファイルを開いて編集加工をすると、編集加工されるのはPDFデータの方だけです。ネイティブデータは完全スルーです。
- InDesignにIllustratorファイルをリンク配置する時、InDesignから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
- IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置する時、Illustratorから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
- IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置して埋め込む時、埋め込み処理されるのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
- Illustratorが「そのIllustratorより上のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
- Illustratorが「そのIllustratorと同じバージョンまたは下のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはネイティブデータの方です。PDFデータは完全スルーです。
重要な追記
「IllustratorはPDFを編集するアプリ」と思い違いをしている人がいるようです。ここではっきり言っておきましょう。IllustratorはPDFを編集するアプリではありません。断じて違います。
Illustratorは、Illustratorのネイティブデータだけ編集できるアプリです。
PDFデータとIllustratorのネイティブデータはまったくの別物であって、互換性はありません。それならIllustratorがPDFデータを開く時に何をしているのかというと、無理矢理にネイティブデータに変換をしているだけです。そこでは破壊的な変換が行われます。そのようなアプリをPDFを編集するアプリなどとは到底呼べません。
なお、IllustratorのネイティブデータはPGFと呼ばれています。AdobeはPGFの仕様を公開していないのですが、この手鞠先生のブログ記事で、PGFは旧Illustrator形式の拡張であってPDFではないことが分かるでしょう。
Illustratorデータをのぞき見するメソッドについて
追記
追記 EPS形式について
今のIllustrator EPS形式はEPSデータだけを指すのではなく、EPSファイルの一部に非EPSのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。
追記 バックグラウンド保存でPDF変換に不具合が起きる
2020(v24)で、バックグラウンドで保存や書き出しをする機能が搭載されました。この機能はデフォルトでONなのですけど、Illustrator形式を保存する際、正常にPDF変換がされない不具合があります。実際の事例がフォーラムの投稿にあったので参考にしてください。
aiデータを配置するとアピアランスが崩れる、フォントが表示されない
「大雑把なまとめ」がまとまっていなくてわかりにくかったです。
「Illustrator」のような単語が多重複。文章形式。
本文では図解でわかりやすかったのにです。
また、『Illustratorのバージョン「9」以降において』のような条件説明が必要と思いました。
それも含めて大雑把というネタなので、ご了承くださいな。まあたしかに分かりにくいので、モリオ先生が図解を描いてくれたので貼っておきます。
追記:
思い直してもうちょっと分かりやすくしてみました。
はじめまして。
何となくふわっと理解していたつもりですが、
PDF互換ファイルを作成off時のファイル状態の理解は間違っておしました。
正確に理解できました、ありがとうございます。
Adobe PSをそのまま記述していた頃のillustratorと違い
現在はファイル仕様を公開していないのですね。
すると、illustratorネイティブファイルを読み込めるアプリケーションは
独自で仕様を解析や圧縮方式を解読したということになりますね。すごい。
※アプリケーション便利に使わせていただいています。
> illustratorネイティブファイルを読み込めるアプリケーション
おそらく他のアプリは、ネイティブデータではなく、PDFデータの方を読み込んでいるのだと思います。
明確に表記しておりませんでした、
「PDF互換ファイルを作成」にチェック無し+「圧縮を使用」で保存したillustratorファイルです。
シンボルやアピアランス、グラフィックスタイルまで同等の機能に読み込んでいるので、
ファイル構成が公表されていないのであれば、独自解析&実装したと理解しました。