いろんなアプリでちゃんと縦組になるフォントをGlyphsで作る

下記のその3で指摘したGlyphsのバグが開発版2.6.4 (1283) でフィックスされたことを確認しました。2.6.4以降はvrt2も自動生成で大丈夫!


縦組に対応したフォントをGlyphsで作っていて、Adobeのアプリではちゃんと縦組になるのに、他のアプリではおかしくなってしまうことがありますよね。

  • 他のフォントのグリフが表示される。
  • 縦組用のグリフに変わらない。
  • 欧文用英数字が正立したり、スカスカになったりする。

このようになってしまうのは、フィーチャーにvrt2がない、もしくはvrt2のコードが不適切であるのが原因です。その対策方法をここで説明します。
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Illustrator形式のファイル(.ai)についてちゃんと大雑把に説明してみる

v9以降の今のIllustrator形式ファイル(.ai)についてちゃんと説明しているところがないようなので、ここで大雑把に説明してみます。

結論から言うと、Illustrator形式のファイルはPDFファイルです。このことはIllustratorが大好きな皆さんもよく知っているでしょう。ここで私が説明しようとしているのは、それをもうちょっと大雑把に掘り下げた話です。

PDFファイル

PDFファイルの中を覗くと、最初に「%PDF」と書かれていて、最後に「%%EOF」と書かれています。大雑把にいうと、PDFファイルは「%PDFから始まって%%EOFで終わっているファイル」のことです。Illustrator形式のファイルもこうなっています。

「PDF互換ファイルを作成」オフのIllustratorファイル


それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオフにしたIllustratorファイルは、PDFファイルではないのでしょうか? 実はちゃんと%PDFから始まって%%EOFで終わっている歴としたPDFファイルです。そうすると中身はどうなっているのでしょうか?

「これはPDFの内容を含めずに保存されたAdobe® Illustrator®ファイルです」と書かれたものを皆さんは見たことがあるでしょう。あれが保存されたPDFそのものです。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれています。

なお、ネイティブデータはPDFとは異なる独自仕様のデータです。今のIllustrator形式はネイティブデータだけを指すのではなく、PDFファイルの一部に非PDFのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。

「PDF互換ファイルを作成」オンのIllustratorファイル


それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオンにして保存するとどうなるでしょうか?

IllustratorのネイティブデータがPDFに変換されて保存されます。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれます。

「PDF互換ファイル」は、ネイティブデータをちゃんとPDFに変換したファイルであるという意味なんですね。めちゃくちゃ分かりにくい。

大雑把なまとめ

  • 今のIllustrator形式ファイル(.ai)は、常にPDF形式のファイルとして保存されます。そして常に非PDFであるネイティブデータを中に含みます。
  • Illustratorのネイティブデータを直接開いて編集できるのは、Illustratorだけです。
  • AcrobatがIllustratorファイルを開く時、Acrobatが開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • AcrobatでIllustratorファイルを開いて編集加工をすると、編集加工されるのはPDFデータの方だけです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • InDesignにIllustratorファイルをリンク配置する時、InDesignから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置する時、Illustratorから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置して埋め込む時、埋め込み処理されるのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • Illustratorが「そのIllustratorより上のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • Illustratorが「そのIllustratorと同じバージョンまたは下のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはネイティブデータの方です。PDFデータは完全スルーです。

重要な追記

「IllustratorはPDFを編集するアプリ」と思い違いをしている人がいるようです。ここではっきり言っておきましょう。IllustratorはPDFを編集するアプリではありません。断じて違います。

Illustratorは、Illustratorのネイティブデータだけ編集できるアプリです。

PDFデータとIllustratorのネイティブデータはまったくの別物であって、互換性はありません。それならIllustratorがPDFデータを開く時に何をしているのかというと、無理矢理にネイティブデータに変換をしているだけです。そこでは破壊的な変換が行われます。そのようなアプリをPDFを編集するアプリなどとは到底呼べません。

なお、IllustratorのネイティブデータはPGFと呼ばれています。AdobeはPGFの仕様を公開していないのですが、この手鞠先生のブログ記事で、PGFは旧Illustrator形式の拡張であってPDFではないことが分かるでしょう。
Illustratorデータをのぞき見するメソッドについて

追記

モリオ先生が図解してくれたので、ここに貼っておきますね。

追記 EPS形式について

今のIllustrator EPS形式はEPSデータだけを指すのではなく、EPSファイルの一部に非EPSのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。

追記 バックグラウンド保存でPDF変換に不具合が起きる

2020(v24)で、バックグラウンドで保存や書き出しをする機能が搭載されました。この機能はデフォルトでONなのですけど、Illustrator形式を保存する際、正常にPDF変換がされない不具合があります。実際の事例がフォーラムの投稿にあったので参考にしてください。
aiデータを配置するとアピアランスが崩れる、フォントが表示されない

InDesignで引用符を合成フォントの特例文字で欧文フォントにしている場合の引用符のアキ量設定の文字クラス

InDesignで英数字だけ欧文フォントにするには合成フォント機能が便利ですよね。デフォルトでは引用符が和文フォントになるので、特例文字を追加して引用符を欧文フォントにすることもあります。InDesignが大好きな皆さんもよくやっていることでしょう。

この時にその引用符はアキ量設定のどの文字クラスになるのか。この文字クラスに非常に大きなトラブルの種があることが判明しました。まずは結果から見てください。
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浮紙 8.3.0

浮紙を8.3.0にアップデートしました!
ダウンロードは 浮紙ページからどうぞ。

  • システム要件を OS X Yosemite 10.10.5以降に変更。
  • [環境設定 > 新規]にマージン設定を追加。
  • 保存時にUndoを区切るようにした。
  • 保存パネルで拡張子が必ず表示されるようにした。
  • Retinaでの描画不備を修正。
  • 表記「テキストエンコーディング」を「ファイルエンコーディング」にすべて変更。

ダークモード対応は、解決できないことがあるので見送りました…。

いろいろアップデート

Githubの方で公開しているアプリ4つを一通りアップデートしました。いずれもシステム要件がOS X 10.10.5以降に変更されましたので、ご注意くださいな。

Como Lite 2.1.0
ダークモード対応。

CiPT Lite 4.1.0
ダークモード対応。
実行されたかどうか視覚的に分かるようにするため、実行時にディスプレイを一瞬だけ暗くするようにしました。

FileListPrint Lite
ダークモード対応。
75%縮小を前提にプリントしていたのを100%原寸を前提にするよう改善しました。

Creating Font Viewer
ダークモード対応。
チェックボックス[縦組]を追加しました。

それから、FontBBox Viewer も1.6にアップデートしました。これもダークモード対応でシステム要件がOS X 10.10.5以降に変更されました。そういえばFontBBox ViewerってTwitterの方だけで告知していて、このブログで全然紹介してなかった…。一言でいうと、フォントファイル内に収納されているFontBBox、各種メトリック、字形などの情報をグラフィカルにかっこよく表示するアプリです! フォントエンジニアリングのマニアックさをかっこよく見せる企てといえましょう。