GlyphsのvertOriginの改善と問題

Glyphsは2.6.2のリリース時点でvertOriginの設定に重要な変更をしています。その変更は編集ビューで縦組にした時の情報パネルに反映されました。

情報パネルの見た目が大きく変わっています。ここで最も重要な変更は「o default」と表示されている項目が新たに追加されたことです。この箇所でvertOriginの数値を直接設定できるようになりました。

vertOriginについて

そもそもvertOriginとは何でしょうか。全角アルファベットと全角記号のグリフを例にして説明します。
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SPAi 3.5.0

SPAi アイコン

SPAiを3.5.0にアップデートしました!
ダウンロードはSPAi専用ページからどうぞ。

  • スクリプトパネル上部のIllustrator名表示を少し大きくした。
  • 明るさ自動調整を廃止した。

ダークモード対応は見送り。明るさ自動調整を廃止したのは、MojaveでOS側の制限がキツくなってしまって、2020を含む複数バージョンのIllustratorを同時起動して切り替えると、2020が最前面になるたびにアラートが表示されてしまうようになったからです。

SPAiは明るさ自動調整がONならIllustratorが最前面になるたびにUIの明るさを確認していたのですけど、これが2020で反応されまくってしまうんですね。仕方がないので、明るさ自動調整そのものを廃止にすることにした次第です。(hamkoさんに感謝!)

Illustrator名表示を大きくしたのは、あかつきさんのリクエスト。DTPerはもうみんな老眼だし、このくらいがちょうどいいよね!

いろんなアプリでちゃんと縦組になるフォントをGlyphsで作る

下記のその3で指摘したGlyphsのバグが開発版2.6.4 (1283) でフィックスされたことを確認しました。2.6.4以降はvrt2も自動生成で大丈夫!


縦組に対応したフォントをGlyphsで作っていて、Adobeのアプリではちゃんと縦組になるのに、他のアプリではおかしくなってしまうことがありますよね。

  • 他のフォントのグリフが表示される。
  • 縦組用のグリフに変わらない。
  • 欧文用英数字が正立したり、スカスカになったりする。

このようになってしまうのは、フィーチャーにvrt2がない、もしくはvrt2のコードが不適切であるのが原因です。その対策方法をここで説明します。
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Illustrator形式のファイル(.ai)についてちゃんと大雑把に説明してみる

v9以降の今のIllustrator形式ファイル(.ai)についてちゃんと説明しているところがないようなので、ここで大雑把に説明してみます。

結論から言うと、Illustrator形式のファイルはPDFファイルです。このことはIllustratorが大好きな皆さんもよく知っているでしょう。ここで私が説明しようとしているのは、それをもうちょっと大雑把に掘り下げた話です。

PDFファイル

PDFファイルの中を覗くと、最初に「%PDF」と書かれていて、最後に「%%EOF」と書かれています。大雑把にいうと、PDFファイルは「%PDFから始まって%%EOFで終わっているファイル」のことです。Illustrator形式のファイルもこうなっています。

「PDF互換ファイルを作成」オフのIllustratorファイル


それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオフにしたIllustratorファイルは、PDFファイルではないのでしょうか? 実はちゃんと%PDFから始まって%%EOFで終わっている歴としたPDFファイルです。そうすると中身はどうなっているのでしょうか?

「これはPDFの内容を含めずに保存されたAdobe® Illustrator®ファイルです」と書かれたものを皆さんは見たことがあるでしょう。あれが保存されたPDFそのものです。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれています。

なお、ネイティブデータはPDFとは異なる独自仕様のデータです。今のIllustrator形式はネイティブデータだけを指すのではなく、PDFファイルの一部に非PDFのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。

「PDF互換ファイルを作成」オンのIllustratorファイル


それでは、保存時に「PDF互換ファイルを作成」をオンにして保存するとどうなるでしょうか?

IllustratorのネイティブデータがPDFに変換されて保存されます。そしてこのPDFの中にIllustratorのネイティブデータが含まれます。

「PDF互換ファイル」は、ネイティブデータをちゃんとPDFに変換したファイルであるという意味なんですね。めちゃくちゃ分かりにくい。

大雑把なまとめ

  • 今のIllustrator形式ファイル(.ai)は、常にPDF形式のファイルとして保存されます。そして常に非PDFであるネイティブデータを中に含みます。
  • Illustratorのネイティブデータを直接開いて編集できるのは、Illustratorだけです。
  • AcrobatがIllustratorファイルを開く時、Acrobatが開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • AcrobatでIllustratorファイルを開いて編集加工をすると、編集加工されるのはPDFデータの方だけです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • InDesignにIllustratorファイルをリンク配置する時、InDesignから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置する時、Illustratorから見えているのはPDFデータのみです。ネイティブデータは完全スルーです。
  • IllustratorにIllustratorファイルをリンク配置して埋め込む時、埋め込み処理されるのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • Illustratorが「そのIllustratorより上のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはPDFデータの方です。ネイティブデータは完全スルーです。
  • Illustratorが「そのIllustratorと同じバージョンまたは下のバージョンで保存されたファイル」を開く時、開くのはネイティブデータの方です。PDFデータは完全スルーです。

重要な追記

「IllustratorはPDFを編集するアプリ」と思い違いをしている人がいるようです。ここではっきり言っておきましょう。IllustratorはPDFを編集するアプリではありません。断じて違います。

Illustratorは、Illustratorのネイティブデータだけ編集できるアプリです。

PDFデータとIllustratorのネイティブデータはまったくの別物であって、互換性はありません。それならIllustratorがPDFデータを開く時に何をしているのかというと、無理矢理にネイティブデータに変換をしているだけです。そこでは破壊的な変換が行われます。そのようなアプリをPDFを編集するアプリなどとは到底呼べません。

なお、IllustratorのネイティブデータはPGFと呼ばれています。AdobeはPGFの仕様を公開していないのですが、この手鞠先生のブログ記事で、PGFは旧Illustrator形式の拡張であってPDFではないことが分かるでしょう。
Illustratorデータをのぞき見するメソッドについて

追記

モリオ先生が図解してくれたので、ここに貼っておきますね。

追記 EPS形式について

今のIllustrator EPS形式はEPSデータだけを指すのではなく、EPSファイルの一部に非EPSのネイティブデータを含む構造のデータを指しています。

追記 バックグラウンド保存でPDF変換に不具合が起きる

2020(v24)で、バックグラウンドで保存や書き出しをする機能が搭載されました。この機能はデフォルトでONなのですけど、Illustrator形式を保存する際、正常にPDF変換がされない不具合があります。実際の事例がフォーラムの投稿にあったので参考にしてください。
aiデータを配置するとアピアランスが崩れる、フォントが表示されない

InDesignで引用符を合成フォントの特例文字で欧文フォントにしている場合の引用符のアキ量設定の文字クラス

InDesignで英数字だけ欧文フォントにするには合成フォント機能が便利ですよね。デフォルトでは引用符が和文フォントになるので、特例文字を追加して引用符を欧文フォントにすることもあります。InDesignが大好きな皆さんもよくやっていることでしょう。

この時にその引用符はアキ量設定のどの文字クラスになるのか。この文字クラスに非常に大きなトラブルの種があることが判明しました。まずは結果から見てください。
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