SPAi 3.7.2

SPAiを3.7.2にアップデートしました。
ダウンロードはSPAi専用ページからどうぞ。
SPAiが正常に動作しない場合は未公証版からどうぞ。

Dockメニューに「再起動」を付けました。このメニューを選択するとSPAiが再起動します。スクリプトパネルが表示されないとかちょっとおかしいなと感じたら、ここで再起動してみてください。

InDesignの漢字のワイルドカード

InDesignの検索には漢字のワイルドカードがあります。通常の検索では「^K」、正規表現検索では「~K」となります。

当初からマッチしない漢字があまりに多すぎて、使いものにならず、長年そのまま放置されてきました。
参考:InDesign CS3の漢字のメタ文字「~K」を検証する

それが2023のv18.2で、やっと抜本的に修正されました。実はまだ一部の漢字がマッチしないのですが、かなりマシになっています。ここではどの漢字がまだマッチしないのかを書いておきます。

Unicodeの漢字

InDesignはUnicodeベースなので、漢字はイコール「Unicodeの漢字」を意味します。下記でマッチするかどうか確かめました。

  • 2E80..2EFF CJK部首補助
  • 2F00..2FDF 康熙部首
  • 3005 々(漢字の踊り字)
  • 3007 〇(漢数字のゼロ)
  • 303B 〻(漢字の踊り字)
  • 3400..4DBF CJK統合漢字拡張A
  • 4E00..9FFF CJK統合漢字
  • F900..FAFF CJK互換漢字
  • 20000..2A6DF CJK統合漢字拡張B
  • 2A700..2B738 CJK統合漢字拡張C
  • 2B740..2B81D CJK統合漢字拡張D
  • 2B820..2CEA1 CJK統合漢字拡張E
  • 2CEB0..2EBE0 CJK統合漢字拡張F
  • 2F800..2FA1F CJK互換漢字補助
  • 30000..3134A CJK統合漢字拡張G
  • 31350..323AF CJK統合漢字拡張H

ダウンロード:漢字検索の検証-2023-v18.2.zip

CJK統合漢字拡張H

まず、「^K」「~K」ともにCJK統合漢字拡張Hのブロックがマッチしません。これは不具合ではなく仕様です。

InDesignのワイルドカードやメタ文字は、特定のUnicodeバージョンに準拠しており、2023(v18)が準拠しているのはUnicodeバージョン14です。CJK統合漢字拡張Hはバージョン15で追加されたブロックなので、そこにマッチしないのは仕様といえます。2024(v19)でバージョン15準拠となればマッチするようになるでしょう。

なお、Adobe-Japan1では、2023年1月18日リリースのCMapでCJK統合漢字拡張HのU+31350を追加しています。この文字にはまだマッチしません。

通常の検索「^K」

CJK部首補助の2E9Aと2EF4~2EFF、康煕部首の2FD6~2FDFがマッチしません。ここはUnicodeで文字が割り当てられていない箇所なのでマッチしなくても問題ないでしょう。

漢字の踊り字「々〻」の2文字がマッチしません。ここはマッチしてほしいところです、

正規表現検索「~K」

CJK部首補助と康熙部首のブロックが丸ごとマッチしません。「^K」でマッチしているので、ここもマッチしてほしいところです。

漢字の踊り字「々〻」と漢数字のゼロ「〇」の3文字がマッチしません。とくに漢数字のゼロがマッチしないのは不具合といってよいでしょう。

マッチしない箇所を含めて正規表現でマッチさせるには、このようにするよいでしょう。
[\x{2E80}-\x{2FDF}々〇〻~K\x{30000}-\x{3FFFF}]

まとめ

InDesign 2023 v18.2で改善された漢字のワイルドカードは、これまでと比べるとかなりの精度でマッチするようになっています。漢字の踊り字「々〻」と漢数字のゼロ「〇」の3文字には注意を要するものの、実用に耐えられると評価してよいでしょう。

AdobeのUserVoiceって何?

現在、Adobeは各アプリごとに、ユーザーがアプリの不具合や新機能の要望を直接フィードバックできるUserVoiceのサイトを設けています。

アドビ製品向けUserVoiceの使用 – UserVoiceを使用して新しい機能をリクエストし、バグをレポートする手順

UserVoiceは、それ自体はAdobeが作ったものではありません。UserVoice社が提供しているソフトウェアフィードバックシステムであり、それがかなり優れているので、MicrosoftやAdobeなどの大手IT企業も利用しているものです。

ユーザーはここに投稿することで直接フィードバックができます。Adobeはその投稿をもとにしてバグを修正したり機能を追加したりしています。とても多くの投稿があるので、すべての投稿に応えるのは無理です。そこでAdobeは優先度を設けて取り組んでおり、その優先度の指針が「投票数」です。

投票数は、投稿ページの投票ボタンをユーザーが押した数です。その数が大きく目立つように表示されています。投票数が多いほど優先度が上がり、各アプリの開発チームが実際に取り組んでくれるようになるんですね。

初めて投票ボタンを押すと、下図のような表示になります。

AdobeのUserVoiceだからといって、メールアドレスとパスワードにAdobe IDを入れてもできません。UserVoice社のシステムなので、UserVoice専用のアカウントを作成する必要があるのです。ここがちょっと分かりにくいのが難点です。

「アカウントを作成する」をクリックして、アカウントを作って投票しましょう。これが開発チームを動かす力になるのです。

追記

UserVoiceのアカウントは、ひとつだけ作成すれば共通に使えるわけではなく、各アプリごとのUserVoiceサイトで個別にアカウントを作る必要があります。これも分かりにくいし、面倒ですけど、頑張って作ってください!

Illustratorファイルを印刷用PDFにする設定はどうすればいいのか

Illustratorファイルを印刷用PDFにする時に設定をどうすればいいのか、悩んでいる人は多いでしょう。ここでは私がしていることを書いてみます。

PDFにする時の設定は、専門的で難解なものばかりです。わけがわからないですよね。

実は、すでに専門家が作った印刷用の設定があるのです。しかも自由に使えてしまいます。全ての設定を自分で決めるなんてことはしなくていいのです。

専門家が作った印刷用の設定を入手する

SCREENの「出力の手引きWeb」からダウンロードできます。ページの右下に「EQUIOS印刷ユーティリティ」の四角い大きなボタンがあります。ここをクリックするとzipファイルがダウンロードされます。

zipファイルを解凍すると、謎のファイルが出てきます。
使うのは「EQUIOS X4 2010_1_J」「EQUIOS X4 trim 2010_1_J」の2つだけです。

拡張子「.joboptions」のファイルは、PDFにするためのあらゆる設定が全て記録されたファイルです。「PDFプリセット」とも呼ばれます。専門家が作ったこのファイルを使えば良いのです。

Illustratorで使える場所にファイルを入れる

2つのファイルをIllustratorで使えるようにしましょう。その方法は、特定のフォルダの中にファイルを入れるだけです。
ここではmacOSの場合を説明します。Windowsはよく分からないので。

Finderのメニューバー「移動 > フォルダへ移動…」を選択します。
表示されたウインドウに「~/Library/Application Support/Adobe/Adobe PDF/Settings」と入力します(これをコピペすると良いでしょう)。

「移動」ボタンを押すと、「Settings」フォルダの中が表示されます。
ここにPDFプリセットファイルを入れると、Illustratorで使えるようになります。

「Settings」フォルダの中に2つのファイルをいれます。

ファイル名が分かりにくいので、変えてしまいましょう。
「EQUIOS X4 2010_1_J」→「納品用|X4ペラ|トンボなし」
「EQUIOS X4 trim 2010_1_J」→「納品用|X4ペラ|トンボ付」

「納品用|X4ペラ|トンボなし」は、自動的にトンボを付けない場合に使います。トンボをパスで置いている時は、自動トンボは不要なので、この設定を使います。

「納品用|X4ペラ|トンボ付」は、自動的にトンボを付ける場合に使います。裁ち落としが必ず3mmになるように設定されています。

設定を少し変更する

「納品用|X4ペラ|トンボなし」は、実は日常的に使うにはちょっと使いにくい設定がされています。これを使いやすくしましょう。

Illustratorで「Adobe PDFを保存」ウインドウを表示します。
プリセットで「納品用|X4ペラ|トンボなし」を選択します。
「裁ち落とし」を見てください。3mmに設定されています。

自動的にトンボを付けない場合、裁ち落としは不要なのがほとんどなので、0mmにした方が使いやすいでしょう。0mmに変更したら、右上の保存アイコンボタンを押します。

同じ名前にして上書保存します。同じ名前にできないこともあり、その時は少し名前を変えて保存します。

保存した後にファイル名を変えるのもOKです。「Adobe PDFを保存」ウインドウのプリセットに表示されるのはファイル名なので、分かりやすいファイル名にして整理すると良いでしょう。

ゲラ用のPDFの設定をする

PDFにするのは印刷用だけではありません。ゲラ用としてPDFをメールに添付送信したりします。この時のPDFは、なるべく軽い方が良いです。その設定をしたPDFプリセットファイルを作ってみましょう。

「納品用|X4ペラ|トンボなし」ファイルを複製します。
名前を「ゲラ用144|X4ペラ|トンボなし」にします。

最終的に印刷用PDFを納品するのでしたら、トラブル防止のために、ゲラ用であっても印刷用設定を基にするのが最善です。

PDFを軽くするには、画像の解像度を下げて、画像品質も少し下げるしかありません。
下図は私がしている一例です。たいていはこれでOKですが、どんな仕事でもゲラ用は全てこれで良いわけではありません。このあたりは画像や顧客などの兼ね合いがあるので、一概には言えないところです。

設定を変更したら、右上の保存アイコンボタンを押して、先ほどと同様に保存します。

終わりに

繰り返しますが、私は自分で全て設定することはせず、専門家が作ったプリセットファイルを基にして、一部分だけ仕事に合わせてカスタマイズをしています。基本的な一通りの流れ、勘所などを紹介できればと思って、始めのとっかかりのところだけを書きました。

PDFプリセットファイルは、後で何度も整理したり、支給されたファイルを使うことがあります。そのたびに「Settings」フォルダを探すのは大変なので、「Settings」フォルダのエイリアスをデスクトップに作っておくのを強くお勧めします。
opt+cmdキーを押しながらデスクトップにドロップすればOKです。

印刷用PDFの設定には、印刷用にちゃんとできていないIllustratorファイルを印刷用に整えてくれる機能はありません。元のファイルが印刷用にちゃんと作られていることが大前提であり、ちゃんと作るには相応の知識と経験を経たスキルが必要になります。服や靴を作るのと同じで、スキルがなくても自動的にいい感じに作ってくれる未来はこないでしょう。

追記

Illustratorのメニュー「編集 > Adobe PDF プリセット…」を選択すると、PDFプリセットを編集できるウインドウが表示されます。実は、この記事を公開した時、私はまだこれに気づいていませんでした…(あかつきさん、ありがとう)。


「読み込み…」「書き出し」ボタンは、使わなくていいですね。それよりも、「Settings」フォルダの中でファイルとして直接いじった方がずっと楽です。

3つのボタンがありますが、どのボタンも、リストでプリセットを選んでから押すのが前提になっています。

左のボタンは、ツールチップに「新規…」と表示されますが、選択したプリセットをベースにして設定編集ウインドウが表示されます。
中央のボタンは、選択したプリセットを編集するボタン。これが一番良く使いそう。
右のボタンは、選択したプリセットを削除するボタン。これは使わなくていいですね。

「Settings」フォルダの中にフォルダを作り、そこにPDFプリセットファイルを入れると、Adobeアプリが認識しなくなります。たまに使うプリセットはフォルダに入れて退避しておくのがお勧めです。この退避は「Adobe PDF プリセット」でできないので、やはり「Settings」フォルダの中を自分で整理するのが最善でしょう。

FILL Id 1.1.0

FILL Idを1.1.0にアップデートしました。
ダウンロードは FILL Idのページからどうぞ。

作った本人が毎日よく使っているアプリのひとつです。このショートカットを無意識に手癖のようにしてInDesignを使っています。機能も仕様もほとんど変わらないまま、気づけば15年経っていました。

今回のアップデートでやっと実現できたのが、「完全フォーマットなしでペースト」を実行した後の取り消しです。これまで2回のUndoが必要でしたが、1回で済むようになりました。15年越しの念願達成。うれしいですねえ。

AppleScriptでInDesignのundo modeをどうやって使うのかは情報が乏しく、しかもFILL IdはXojoのプラグインでNSAppleScriptMBSを使っており、その兼ね合いでまた悩ましかったりしていました。そもそもdo script自体が引数をハンドラにするとundo modeが発動しないんですよね。いろいろ試行錯誤した結果、ハンドラではなくコードを文字列として渡せばundo modeが発動することが分かりました。このあたりはJavaScriptと異なり気づきにくいと思うので、ここに書いておきます。